植物の陸上進出

 地球は今,緑の大地である。それは,かって陸上進出した植物が光合成色素によって緑色光以外を吸収・利用しているため,私たちの眼には反射光の緑色として見えるからである。上陸した植物は,水中と異なる問題点 (下記参照)を乗り越え,新天地での物質とエネルギーの循環系を築き上げ,後に続く動物と菌類の上陸を待って陸上生態系を確立した。もし植物が上陸しなければ,荒涼とした褐色の大地のままであり,私たちも進化しなかったであろう。現在,植物を中心とする陸上生態系は,生命が誕生した海洋生態系に大きな影響を及ぼすまでになった。
<問題点>
 @大気中なので,生体に必要なH
Oの確保が困難
 A気候の変化(風,気温・湿度変化など)が激しい
 B大きな重力がかかる
 C陸上に適した生殖方法の開発など

 

<最古の陸上植物>

 水中の緑藻類から陸上植物への進化過程については今のところはっきりとした化石の記録がない。最古の陸上植物は約4億2千万年前(シルル紀の中期)のクックソニアで,根と葉がなく高さが十数センチの植物である。この植物の茎には,現在の陸上植物に特有な維管束(通道組織)が不完全ながらすでに進化しており,茎の先端にはコケやシダ植物に共通な生殖器官である胞子嚢も形成されている(下図 )。胞子体の特徴から推して,クックソニアはコケではなく,シダまで進化していない植物と考えられる。

維 管 束

クックソニア

胞 子 嚢

 

<維管束植物の発達>

 デボン紀(約4億年前)にはいると,典型的な維管束をもつリニア植物( 図 1)が現れ,続いてシダ植物も進化する。維管束植物は,維管束という機械的強度を兼ね備えた通道組織を獲得することによって次第に大型化し,デボン紀後期(約3億7千万年前)には背丈が数メートルに達するシダ植物の森林をつくりあげる。同じ頃,最初の種子植物となる裸子植物も進化し始め,石炭紀・ペルム紀にかけて森林の大木化が加速する( 図2 )。 その後,中生代の後期(白亜紀)にもう一つの種子植物である被子植物が加わる。被子植物は色とりどりの花をつけ,昆虫との共同作戦による画期的な生殖法に成功し,森林と草原の中核を担うようになり,今日に至っている(維管束植物の系統樹参照,PDF形式)
このように,緑の大地は,維管束植物によって成立している。


(図1 リニア植物)


(図2 裸子植物)

【参考】細菌類と菌類は,植物と相前後して上陸したと思われるが,明確な証拠がない。