脂 質
脂質は,水に溶けにくく,エーテル・ベンゼンなどの有機溶媒に溶ける物質の総
称である。水に溶けにくい性質(疎水性)は,鎖状または環状の長い炭化水素鎖 の分子構造をもつことによる。重要な脂質として,中性脂質(中性脂肪),複合脂 質,ステロイドがある。 |
<1>中性脂質(中性脂肪)
中性脂質は,1分子のグリセロール(グリセリン)と3分子の脂肪酸がエステル結合してできている。皮下脂肪として体温の維持に役立つとともに,リパーゼで加水分解され(下図参照),重要なエネルギー源となる。
@グリセロール(グリセリン) グリセロールC3H5(OH)3はOH基を3個もつ3価のアルコールで,水と親和性がある。 A脂肪酸 脂肪酸は炭化水素鎖の一端にカルボキシル基を持ち,一般式はRCOOHで示される。天然に存在する脂肪酸は炭素数が16と18のものが多く,炭化水素鎖に二重結合(C=C)を含まない飽和脂肪酸と,それを含む不飽和脂肪酸に分けられる(下図参照)。常温では普通,前者は固体状に,後者は液体状になる。 |
* ヒトの必須脂肪酸(生体内で合成不可)
<2>複合脂質
グリセロールに,脂肪酸のほかに,リン酸・糖・窒素化合物などが結合したものを複合脂質という。代表的な複合脂質にリン脂質と糖脂質があり,両者とも生体膜の主要な構成成分である。
リン脂質の例:ホスファチジルコリン 糖脂質の例:セレブロシド
|
<3>ステロイド
ステロイドとは,互いに結合した4ケの環を基本構造とした疎水性化合物をいい,ステロイドの代表例にコレステロール(下図)がある。コレステロールは,動脈血管壁に沈着して動脈硬化症の原因となるが,一方ではこれを素材として,性ホルモン,副腎皮質ホルモン(コルチコイド)などの生理活性物質が合成されることも知られている。 |