昆 虫 の 例

@ 命がけの交尾

カマキリの♂が交尾後,♀に食べられてしまう話は有名である。本当に

♂はだまって食べられるのであろうか。「性」の本能があれば「生」の本

能もあり,実際にはかなりの♂が逃げ延びるらしい。とは言え,カマキリ

の♀は自分勝手であり1回切りの交尾で死ぬ♂はかわいそうな気がする。

カマキリに生まれてこなくてよかった。               

 同じことはクモの種類でもみられる。クモの場合,交尾といっても♂に

ペニスに相当するものがなく,触肢の先端につくられた精液を♀の生殖口

に注入するだけである。単純な交尾だが♂はうかつに♀に近づけない。ク

モの多くは♀が大きく,巣に近づくものはすべて餌とみなして平気で共食

いする。そこで♂は,食べられないようにいろいろな工夫を凝らして♀に

接近しなければならない(下図はジョロウグモ)。このような生と死が隣

り合わせの交尾は,求愛行動による性の認識がまだ発達段階にあるからな

のかもしれない。                         

             

        おおー怖ー!          ♂(左側)の運命やいかに!

   

A 嫉妬心の交尾

川でよく見かけるトンボに翅の黒いカワトンボがいる。トンボの交尾で

はまず,つがいになって飛び,前にいる♂が尾の先端で♀の首元をしっか

りと挟んでいる。この姿勢から,♀が腹を曲げて♂の腹にある交尾器から

精子を受け取り,交尾が完了する。ところがカワトンボの♂は,♀にすん

なりと精子を渡さない。♀の生殖器の中を調べて別の♂の精子が入ってい

ると,♂はブラシやスプーンみたいな器具を使って精子をかき出し,その

後で自分の精子を渡すという。この行動の背景には明らかに,自分の精子

による子だけを残したいという意図があり,実にわがままで嫉妬深い交尾

である。それにしても発達した脳をもたないトンボがここまで自分の子に

こだわるとは驚きである。                     
 

 

   僕の子だけでいいんだ!