植 物 の 例

 植物では,体細胞を細胞培養することによって容易に個体発生させるこ

とができる。従って,体細胞に外来遺伝子を導入すれば,遺伝子組み換え

植物(トランスジェニック植物)を作れる。体細胞への遺伝子導入ではD

NA組み換え技術を駆使しやすいこともあって,これまでに多くのトラン

スジェニック植物が実用化されている。その中で今,遺伝子組み換え作物

の安全性が話題になっている。遺伝子を導入する目的は,病害虫抵抗性,

除草剤耐性,含有成分の変更,商品管理の向上など様々である。このよう

な遺伝子組み換え作物は欧米を中心にその開発が進んでおり,商品化され

た作物は,一部我が国にも輸入されている。日本で輸入が認められている

組み換え作物は1998年末現在で6種20品種あり(下表),主に加工

食品として食用油,醤油,豆腐,菓子類,ビールなどに使用されている。
 

<日本で輸入が認められている遺伝子組み換え作物> 

    品種       特性
 トウモロコシ(1)
 トウモロコシ(3)
 ジャガイモ(2)
 ダイズ(1)
 ナタネ(9)
 ワタの実(1)
 ワタの実(2)
 トマト(1)
  除草剤耐性
  害虫抵抗性(ガ類)
  害虫抵抗性(甲虫類)
  除草剤耐性
  除草剤耐性
  害虫抵抗性(ガ類)
  除草剤耐性
  日持ち性

( )内は品種数, 国内ではまだ商品化されていない

 

 組み換え作物の中には抗生物質耐性遺伝子を組み込んだものや殺虫成分

を含むものがあり,長年月の体内蓄積による影響は今のところ予測できな

い。また,組み換え作物自身が長年の間に有害な変異を起こす可能性もな

いとは言えない。将来の生態系への影響も含めて,これらの対策を考慮し

ておく必要がある。まもなく,日本で開発された組み換え作物が商品化さ

れると聞く。毎日,口に入れるものだけに,消費者に不安を与えない安全

な体制作りと情報提供が急がれる。