生殖細胞の起源

− 始原生殖細胞 −

 男女とも中学時代までに排卵や射精をするようになる。生殖細胞は思春期になって初めて造られるものであろうか。もっと具体的にいうと,30歳の女性が子供をつくる場合,30年間老化したボディーの体細胞から若い生殖細胞(卵)が造られているのだろうか。答えはNoである。実は,生殖細胞は非常に早い発生段階(胚期)で決定され,ボディーに分化する体細胞とは別の細胞系列になっている下図に例)。最初に分化した生殖細胞は始原生殖細胞と呼ばれ,動物の種類にもよるが,発生中のボディー内を血流アメーバ運動で移動しながら生殖巣原基(卵巣や精巣の始まり)に到達する。その後卵巣や精巣の分化が進むに従って,その中にある生殖細胞も卵原細胞,精原細胞へと分化していく。
 それにしても生殖細胞だけが老化しないでゼロ時間からスタートできる秘密はどこにあるのだろうか。今のところ,ショウジョウバエやカエルでは生殖細胞に特有の細胞質因子(生殖顆粒)が発見されているが,ヒトではそのような顆粒はみられない。若返りの秘密を早く知りたいものである。
 
<ヒトの始原生殖細胞>:受精後4週目 胚
左図:受精後4週目に入ると胚の後部域に始原生殖細胞が出現する(それ以前の発生段階については現在不明)。これらの細胞はアメーバ運動をしながら,分化中の生殖巣 (生殖巣原基)へと移動する。その後,精巣や卵巣の分化が進むに従って,始原生殖細胞は精原細胞や卵原細胞に分化する。

 

<ニワトリの始原生殖細胞>:孵卵20時間 胚
左図:孵卵20時間ほどたつと胚体外の前方域に始原生殖細胞が出現する。孵卵3日目頃になると胚体に心臓が分化し,卵黄嚢から延びる血管と結合する。この血流に乗って始原生殖 細胞 は胚体へ移動し,分化中の生殖巣(生殖巣原基)へ入る。その後の生殖細胞の分化は,ヒトの場合と同様。

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