〔E〕遺伝子 の相互作用
 1つの遺伝形質の発現に関して,2組以上の対立遺伝子が影響しあう遺伝をいい,この場合,F1やF2の表現型の分離比メンデルの法則に従わない。 遺伝子の相互作用の例を3つ挙げてみる。
<1>補足遺伝子
 スイートピーの花の色には2組の対立遺伝子C>cP>p)が関与し,それぞれ独立の法則に従って遺伝する。優性遺伝子色素原をつくり,優性遺伝子色素原を発色させる遺伝子で,CとPの両方をもつ個体だけが有色の花を付ける。それ以外の遺伝子型をもつ個体は色素のない白花となる。いま,異なる遺伝子型の白花の純系どうしCCppccPP)を交配すると,Fはすべて有色花になり,Fでは有色花白花に分離する(下図)。このように,2組の対立遺伝子が互いに補足しあって1つの形質を発現させる場合,それぞれの遺伝子を補足遺伝子という。

 
<2>抑制遺伝子
 カイコガでは,まゆを黄色にする優性遺伝子)と白色にする劣性遺伝子)のほかに,黄色の発色を抑える優性遺伝子I)抑えない劣性遺伝子i)がある。従って,黄色のまゆになるためには,優性遺伝子)をもつと同時に発色を抑える優性遺伝子)をもたない個体に限られる。いま,まゆが白色の純系IIyy)と黄色の純系iiYY)を交配すると,Fはすべて白色のまゆになり,Fでは白色黄色13に分離する(下図)。遺伝子(I)のように,ほかの優性遺伝子の発現を抑える遺伝子を抑制遺伝子という。

 
<3>条件遺伝子
  ハツカネズミの毛色は,前述した黄色遺伝子による遺伝以外にもいくつか知られている。その中で,黒色,灰色,白色の発現について2組の対立遺伝子C>cG>g)の相互作用による遺伝がある。 優性遺伝子単独で黒色を発現するが,優性遺伝子が共存するときだけ灰色を発現する。また,劣性遺伝子どうしccは,単独で白色になる。いま,灰色の純系CCGG)と白色の純系ccgg)を交配すると,Fはすべて灰色になり,Fでは灰色黒色白色に分離する(下図)。遺伝子は,遺伝子の存在を条件として発現するので,条件遺伝子と呼ばれる。

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