<医 学 的 側 面>
@ 乳幼児の脳は一時的に機能を失っても復帰することがあり,我が国で は6歳未満の脳死判定はしないことになっている。そのことが幼児間の 臓器移植を困難にしている。脳死の内容についても一般の人には理解で きなく,判定は医師に任せるほかない。 A ヒトはHLAという抗原によって遺伝的に個体識別されている。免疫 細胞はこの抗原に照らして体内に侵入してくる異物を認識し排除してい る。HLAがドナーとレシピエントとで完全に一致しない限り,移植臓 器は拒絶され,やがて脱落する。生着率を高めるためには,まず出来る 限りHLAの一致した(臓器にもよるが60%以上の一致)ドナーを捜 す必要がある。 B さらに,移植後は拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤*を一生飲み続 けなければならない。当然ながら,免疫力は低下し,感染症にかかりや すくなる。また抑制剤そのものの副作用もある。 C 未解決な問題として,レシピエント自身の臓器と移植された臓器との 間に埋められない寿命(時間)の差が出来ている可能性がある。即ち, 臓器の構造と機能は同じように見えても,年齢によって残りの寿命が異 っている。例えば,20歳の人が40歳の人の心臓を移植された場合, 20年短命な心臓で生きていると考えられる。 *シクロスポリンとFKー506が有名である。レシピエントの免疫力をある 程度残しながら拒絶反応だけを抑えなければならない。移植臓器の生着率は より優秀な免疫抑制剤の開発にかかっている。 |
近未来の臓器移植?