性 と 生 殖

 「性」とは何だろう。人間を例にとると,性には女と男があり,両

者の性交を通して初めて子供が生まれる。性は細胞レベルでは卵と精子の

区別とみることができ,子供が受精卵に相当する。ヒトの場合,性のしく

みは生殖(同じ種の個体をつくること)に欠くことができない。多くの動

物は性を介さないと子孫を残せなく,その生殖法は有性生殖と呼ばれてい

る。ところが動物全体を見渡すと,性は必ずしも生殖にとって必要なもの

ではない。ゴカイ(環形動物)やヒドラ(腔腸動物)などでは親個体の一

部から子供の個体が直接出芽して増殖する。一方,両性花をもつ被子植物

は確かに花にめしべ(♀),おしべ(♂)という性差がある。しかし花を

つくる個体自身に性の区別がなく,親株は無性的に子株をつくって子孫を

増やす。性を介さないこのような生殖法は無性生殖と呼ばれる。    

 子孫の個体数を増やすことだけを考えると,無性生殖は相手を見つける

手間がいらなく有性生殖よりも合理的な生殖法である。従って,性は本来

生殖(個体数の増加)とは直接関係しないものであり,性の分化が多細胞

生物の進化に伴って発達した背景は別にあると考えねばならない。(有性

生殖へ進む)                           

          

性 の 分 化