〔B〕形成体(オーガナイザー)と誘導 前述のように,各胚域の予定運命は発生とともに次第に決定されていくが,このような決定はどのようにして起こるのだろうか。その糸口はシュペーマン(ドイツ) によって発見された。シュペーマンは,原口背唇部の移植実験を行い,その移植片が本来の予定運命に従って脊索(含む体節の一部)に分化するとともに,移植先の胚の外胚葉に働きかけて新たな神経板→神経管を分化させ,ついには二次胚を形成することを見つけた(下図)。 この原口背唇部のように,隣接する未分化な細胞群に作用して予定運命を決定 ・分化させる胚域部を形成体(オーガナイザー)といい,その分化を引き起こす働きを誘導という。 |
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<原口背唇部の移植実験> | 左図:2種類のイモリの初期原腸胚を用い,一方の胚の原口背唇部を切り取って,他方の胚の腹側に移植した。すると,移植片は予定運命の脊索(含む体節の一部)に分化するだけでなく,まわりの外胚葉を神経板に分化させた。さらに神経板は神経管になり,その周囲に中胚葉の体節のほか,内胚葉から消化管も分化した。ついには,本来の胚のほかに,もう一つ別の胚(二次胚)が形成された。 |
<誘導の連鎖> シュペーマンによる形成体の発見後,両生類の発生では形成体の出現とそれによる誘導が次々と起こることによ って,組織・器官が形成されることがわかってきた。ここでは,目の形成を例に説明する。 |
【右目の形成過程】 |
【発生過程からみた誘導の連鎖】 |
*誘導の連鎖によって,目をはじめ,個体の複雑な構造が出来上がっていく
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