遺伝のしくみ(導入編)

− メンデルの遺伝法則の検証 −

 親の特徴が子に伝わることを遺伝というが,遺伝には法則性がある。その法則性はメンデルによって植物で初めて発見され,その後,3つの法則,すなわち「優性の法則」,「分離の法則」,「独立の法則」にまとめられた。ただ,メンデルの時代には遺伝を司る遺伝子の実体や染色体の存在がわかっていなかったので,ここでは現在の視点から,メンデルの法則性を検証しながら,遺伝の基本となるしくみを学習する
 
〔A〕遺伝用語の基礎知識

<1>遺伝形質と遺伝子
 
生物がもつ形態や体質などの特徴を形質というが,その中で親から子に伝わるものを遺伝形質という(下図:ヒトの例)。遺伝形質は,染色体上にある遺伝子(DNA)の作用によって発現されている

 

<2>対立形質と対立遺伝子
 
遺伝形質には,耳あか(上図)のウエット(湿ったもの)とドライ(乾いたもの)のように,互いに対立する形質がある。このような対となる形質を対立形質といい,対立形質に対応するそれぞれの遺伝子を対立遺伝子という。対立遺伝子下図に示すように,相同染色体上の同じ位置に存在する

 
<3>遺伝子型と表現型
 
個体の体細胞配偶子(生殖細胞)がどのような遺伝子構成をもつかを,記号を用いて示したものを遺伝子型という。遺伝子型は,一般的にアルファベットを用いて示し,大文字が優性遺伝子小文字が劣性遺伝子を表す(上図 の対立遺伝子参照))。そして,遺伝子型によって個体で発現される形質表現型という。
 
<4>ホモ接合体とヘテロ接合体
 
対立遺伝子の遺伝子型がAAやaaのように,同じ遺伝子からなる個体をホモ接合体という。また,Aaのように異なる遺伝子からなる個体をヘテロ接合体という。
 
<5>純系と雑種
 
すべての遺伝子がおなじホモ接合体の間で交配を何代繰り返しても,全く同じ形質をもつ子孫になる。このような個体を純系という。純系以外の,遺伝子が異なる個体間での交配(交雑)では,様々な形質をもつ子孫になる。このような個体を雑種という。1対の対立形質に 着目して交雑したときに得られる雑種を,一遺伝子雑種といい,2対の対立形質に 着目して交雑したときに得られる雑種を,二遺伝子雑種という。
 
〔B〕一遺伝子雑種の遺伝 :1対の対立形質に着目した場合
 メンデルが行ったエンドウの実験によると,種子が丸形になる純系の)としわ形になる純系の)を交配したところ,雑種第一代)で出来た種子の形はすべて丸形になった。次にFの種子をまいて育った個体を自家受精(受粉)させたところ,雑種第二代)で出来た種子の形は,丸形しわ形がほぼになった(下図)。

<1>優性の法則
 
上の結果からメンデルは,1対の対立形質のうちに優先的に現れる形質優性形質に現れない形質劣性形質と呼んだ。このように,FではPがもつ対立形質のうちいずれか一方の形質のみが現れる。これが 「優性の法則」である。遺伝子レベルでみると,対立遺伝子は働きの上で優劣があり,優性形質を現す遺伝子を優性遺伝子,劣性形質を現す遺伝子を劣性遺伝子という。

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