ヒトの遺伝

〔A〕ヒトの遺伝形質

 

 ヒトの遺伝形質も基本的にはメンデルの遺伝法則に従うが, エンドウで述べたような純系の親(P)どうしの交配はあり得なく,また,1対の対立遺伝子による形質発現は非常に少ない(右表)。ここでは現時点で説明できるいくつかの例を挙げてみる。

 

 

 

〔B〕耳あかの遺伝
 
ウェット(W)とドライ(w)は1対の対立遺伝子で決められ,Wがwに対して優性(W>w)。下図は,両親ともウェットのヘテロ接合体の遺伝例。

〔C〕ABO式血液型の遺伝
 ヒトの赤血球型抗原による血液型の1つにABO式血液型があり,その血液型(表現型)には,A型,B型,AB型,O型の4種類がある。遺伝子は,A,B,Oの3種類からなり,AとBの間に優劣関係がなく対等(A=B),AとB はそれぞれ,Oに対して優性(A>O,B>O)である。従って,表現型と遺伝子型の関係は右表のようになる。1つの形質に関して,3つ以上の遺伝子が対立関係にある場合,これらの遺伝子を複対立遺伝子という。 免疫に係わる白血球型抗原(HLA)の遺伝子もこれに当たる。

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