1997年2月,イギリスの研究グループが,成体の乳腺細胞の核を未
受精卵(*1)に移植してクローンヒツジを誕生させることに成功したと
報告した。この雌の子ヒツジはドリー(*2)と名付けられ,その名は瞬
く間に世界中に広まった。ドリーの誕生はそれほど衝撃的なニュースだっ
たのである。その理由は,核移植によるクローン動物が胚細胞(未分化細
胞)のレベルを一挙に飛び越え,成体の体細胞(分化細胞)から作られた
ことを考えると納得がいく。ドリーの成功は,クローン動物を何世代にも
渡って作れる可能性を秘めており,ひいては同じ哺乳類であるクローン人
間の作出にもつながる。当然マスコミの話題はクローン人間に集中した。
その結果,各国の政府が急遽クローン人間の研究禁止を打ち出す事態にま
で発展した。この騒ぎがドリーを有名にしたもう一つの理由であろう。
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