動 物 の 例

 遺伝子組み換え動物(トランスジェニック動物という)の中で今注目さ

れているのが,動物の体内を生産工場として,ヒトに有用な生理活性物質

を乳汁中に産生させる家畜である。イギリスと米国では,導入したヒトの

遺伝子を乳腺細胞で発現させるヒツジやヤギがすでに開発されており,こ

の家畜はヒトの血液凝固因子を乳汁中に分泌することができる(下図)。
 

 

乳汁から抽出した血液凝固因子は,血液製剤として,現在臨床試験が進め

られている。これまでの血液製剤は全て献血者の血液から分離精製された

ものであり,大変な労力を要した。家畜の乳汁から精製できるようになれ

ば,1種類の血液製剤に付き,10頭のヒツジかヤギで世界中の需要がま

かなえると言われる。同様の乳牛が開発できれば,1ないし2頭で足りる

計算になる。血液製剤に限らず,ヒトのインターフェロン,免疫抗体,ワ

クチン,各種ホルモンなどを乳汁中に分泌するトランスジェニック動物が

開発される日も近いであろう。そして,これらの動物をバックアップする

体細胞クローンの技術も進んでいる。開発されたトランスジェニック動物

の能力は体細胞クローンによって確実に子孫へ受け継がれるはずである。

クローンヒツジドリーの作出に乳腺細胞を使ったのも,そんな意図があっ

たように思える。                         

遺伝子組み換え植物の例