ク ロ ー ン 生 物

 クローン(clone)とは,「遺伝的に同一な起源をもつ細胞集団もしくは

生物個体群」をいい,1個の細胞が自己増殖して同じ遺伝情報をもつ細胞

集団や複数の個体になるという意(下図参照)。クローンをとりわけ生物

個体に当てはめた場合がクローン生物であり,多数の個体がお互い一卵性

双生児の間柄になっている。それで,クローン生物はしばしば一卵性多生

児と呼ばれる。例えば,動物で時々生まれる一卵性双生児は広義のクロー

ン生物である。また,植物では親株とその根から出来てくる子株とは,時

間的ズレはあるが,お互い同じ遺伝情報をもつ細胞から成るクローン生物

である(親子間のクローン)。もちろん子株同士もクローン生物になる。

 クローン生物を人為的に作出する目的は,優良品種の家畜や作物を純系

として効率よく維持・保存することにある。家畜や作物は普通,受精(受

粉)によって新個体をつくるので,生まれる子は両親の雑種になってしま

う。たまたま優秀な個体が生まれたとしても,その個体をそのまま次の世

代に残せない。すなわち,有性生殖では同じ遺伝情報をもつ個体は二度と

つくられない。そこで,有性生殖を介さないで遺伝的に同一の子孫を残す

べく考えられたのが個体のクローン化である。家畜や作物は商品として高

品質かつ均一であることが求められる。今後,生物個体をクローン化して

均一な物として扱う傾向は益々進むと思われる。クローン生物について,

まず動物の例を挙げてみる。