遺伝のしくみ(応用編)
− いろいろな遺伝 −
遺伝現象には,メンデルの法則がそのまま当てはまらない例が数多く知られている。ここではいくつかの例について,形質と遺伝子との関係を学習する。 |
〔A〕遺伝子の連鎖 同一の染色体上に在る遺伝子どうしの関係を連鎖という。連鎖している遺伝子は,切断や乗り換え(別紙参照)が起こらない限り,行動をともにして常に同じ配偶子に入るので,独立の法則に従わない。 花の色(A,a)と葉の形(B,b)に係わる2対の対立遺伝子が,AとB,aとbで連鎖している例を挙げてみる(下図)。
Pの配偶子形成では,AとB,aとbは同じ染色体上にあるので行動をともにして同じ配偶子に入る。F1の配偶子
形成でも同じことが起こり,2種類の配偶子しかできない。従って,自家受精したF2では,
遺伝子型がAABB:AaBb:aabb=1:2:1に
,表現型が青花・広葉〔AB〕:白花・細葉〔ab〕=3:1の分離比になる。即ち,2対の対立遺伝子が独立している(別々の相同染色体の組にある)場合のように
,表現型が9:3:3:1の分離比とはならない。 |
〔B〕不完全優性 マルバアサガオで,赤花の純系と白花の純系を交配すると桃色花になり,F1の自家受精で得られるF2では,赤花:桃色花:白花=1:2:1の分離比になる(下図)。これは,赤花の遺伝子(R)と白花の遺伝子(r)の優劣関係が不完全なため,ヘテロ接合体(Rr)で中間色の桃色花が現れると考えられる。このような遺伝子間の関係を不完全優性といい,F1で中間形質を現す個体を中間雑種という。 サクラソウで,花の大・小を決定する遺伝子も不完全優性であり,中間雑種を生じる。 |
〔C〕致死遺伝子 ハツカネズミで,黄色毛どうしを交配すると,黄色毛と黒灰色毛が2:1の分離比になる。また,この黒灰色毛どうしを交配すると黒灰色毛だけが生じる。これは,黄色遺伝子(Y)が黒灰色遺伝子(y)に対して優性 (Y>y)であるが,ホモ接合体(YY)になると致死作用を現すと考えられる(下図)。Yのように,発生過程で個体に死をもたらす遺伝子を,致死遺伝子という。 これまで,ヒトやショウジョウバエでもいろいろな致死遺伝子が発見されている。 |
〔D〕複対立遺伝子 1つの遺伝形質に関して,3つ以上の対立遺伝子が存在する場合,これらの遺伝子を複対立遺伝子という。ヒトでは,ABO式血液型の遺伝子がこれに当たり,A,B,C,3つの遺伝子が対立遺伝子となっている。(詳細は ,ヒトの遺伝参照) |
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